NTTデータ・セキュリティ創立10周年特別コラム情報セキュリティの10大潮流-その9-
~ネットの健全性確保(不正対応への取組み)~

NTTデータ・セキュリティが創立10周年を迎えるのを機に、情報セキュリティの大潮流について解説していきます。
連載では、情報セキュリティの進化の中、10周年にちなんで10大潮流を取り上げ、社会環境の変化とともにその動きを振返り、将来の方向感についても考えていく予定です。
10大潮流は「セキュリティ管理の確立」と「安全安心な電子社会の構築」の二つのカテゴリ毎に夫々5大潮流を定義して概説していきます。<参考1>
第9回目はカテゴリ2の「安全安心な電子社会の構築」の第4の大潮流として「ネットの健全性確保(不正対応への取組み)」について説明します。

<参考1> 情報セキュリティの10大潮流-その1-
 http://www.nttdata-sec.co.jp/article/security/090715.html



■■ 安全安心な電子社会の構築【カテゴリ2】 ■■

第4の潮流 「ネットの健全性確保(不正対応への取組み)」

ネット社会の安全・安心を確保するために2000年に成立した不正アクセス防止法をはじめとして、個人情報保護法、企業秘密情報の漏洩を対象とした不正競争防止法など、相次いで不正に対応する法規制が制定されています。近年さらにワンクリック詐欺、オークション詐欺、フィッシング詐欺等のネット詐欺や犯罪幇助サイト、ネットいじめ等の違法、有害情報の氾濫や不正の複雑・多様化にともなって、ネット秩序の維持に向けた多岐に渡る法制度等が整備されてきています。

1. 有害情報、違法情報

「インターネット・ホットラインセンター<注1>」では、インターネット利用者からの違法情報、有害情報に関する通報を受付け、警察へ通報していますが、平成21年上半期にセンターが受理した通報件数は、62,462件(月平均10,410件)という通報状況だということです(前年同期66,832件対前年同期比で6.5%減)。このうち違法情報について、平成21年上半期は10,573件(対前年同期比6,139件、72.2%増)で、わいせつ物公然陳列と児童ポルノ公然陳列が71.8%を占め、次いで出会い系サイト規制法違反の誘引が9.6%、 規制薬物の広告6.6%、口座等の売買6.0%が続いています。また、殺人等の違法行為の請負等に関する情報、集団自殺を呼び掛ける違法情報については、平成21年上半期は3,535件(対前年同期比2,727件、29.6%増)となっています。

<注1>インターネット・ホットラインセンター
http://www.internethotline.jp/

<出典>警察庁広報資料(平成21年9月)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h21/pdf51.pdf

2. 有害情報、有害サイトへの対応

(1) 青少年ネット規制法

青少年をネットの有害情報から守ることを目的とした、いわゆる「青少年ネット規制法」(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)が平成21年4月1日より施行されています。法律では、有害情報として「犯罪や自殺を誘引する情報」「著しく性欲を興奮させる情報」「著しく残虐な内容の情報」などを挙げており、フィルタリングソフト・サービスの普及などを促しています。
携帯電話会社に対しては、未成年が利用する端末へのフィルタリングサービス提供を義務付け、ISP(インターネットサービスプロバイダ)には顧客の求めに応じてフィルタリングソフトやサービスを提供する義務を課していますが、それぞれ罰則は設けていません。


(2) 出会い系サイト規制法

「出会い系サイト規制法」は、出会い系サイトの利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、児童の健全な育成に資することを目的に平成15年に制定されました。 その後、出会い系サイトの利用に起因した犯罪が依然として多発していたことから、平成20年に出会い系サイト事業者に対する規制の強化等を図るため一部改正され、 平成20年12月1日から施行されています。


(3) インターネット・ホットラインセンター<注1>

日本におけるインターネット上の違法・有害情報の通報受付窓口で、2006年6月1日から運用を開始しています。 センターでは、通報された情報を分析した結果、違法情報であれば警察庁へ通報し、有害情報(公序良俗に反する情報)と判断すれば、プロバイダや電子掲示板の管理者等へ、契約に基づく対応依頼を行います。

3. サイバー犯罪の検挙状況等について

(1) サイバー犯罪の検挙状況

警察庁によると、平成21年上半期のサイバー犯罪の検挙件数は3,870件で前年同期(2,192件)より76.6%増加しています。
①不正アクセス禁止法違反:1,965件で前年同期(157件)より1,151.6%(約12.5倍)増加。
※ 犯行グループ(15人)による不正アクセス禁止法違反(ヤフーオークション詐欺・イーバンク銀行不正送金事件として検挙)が1,813件にも及んだことが要因。
②コンピュータ・電磁的記録対象犯罪:47件で前年同期(73件)より35.6%減少。
③ネットワーク利用犯罪:1,858件で前年同期(1,962件)より5.3%減少。
ネットワーク利用詐欺が増加(706件、前年同期比+123件、+21.1%)。
インターネット・オークション利用詐欺は減少(295件、前年同期比-84件、-22.2%)。
児童買春及び青少年保護育成条例違反は減少(328件、前年同期比-167件、-33.7%)。
わいせつ物頒布等及び児童ポルノ事犯は増加(247件、前年同期比+41件、+19.9%)。
出会い系サイト規制法違反(禁止誘引)は増加(184件、前年同期比+25件、+15.7%)。

<出典>警察庁広報資料(平成21年8月)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h21/pdf51.pdf

(2) ボット

ボットとは、コンピュータウイルスの一種で、コンピュータに感染し、そのコンピュータを、ネットワークを通じて外部から操ることを目的として作成されたプログラムです。感染すると、外部からの指示を待ち、与えられた指示に従って内蔵された処理を実行します。ラック社によると2008年12月から2009年1月にかけて、Webサイトの改ざんを狙ったSQLインジェクションが爆発的に増加。そのほとんどが「ボット」による攻撃であったようです。管理の不十分なコンピュータにユーザの知らない間にボットが設置されることで、DDoS攻撃、迷惑メール送信などが大規模かつ組織的に行われる事例が発生しており、ボットの感染防止、駆除及び被害の局限化などが急務となっています。
これに対処するため、経済産業省は、「コンピュータセキュリティ早期警戒体制の整備」事業の一環として、関係省、組織と連携し、ボットに感染したコンピュータからのサイバー攻撃等を迅速かつ効果的に停止させるための取組みに着手しました。

―サイバークリーンセンター<注2>-
サイバークリーンセンターは、インターネットにおける脅威となっているボットの特徴を解析するとともに、ユーザのコンピュータからボットを駆除するために必要な情報をユーザに提供する活動を行っています。また、ISPの協力によって、ボットに感染しているユーザに対し、ボットの駆除や再感染防止を促すプロジェクトの中核を担っています。

<注2>サイバークリーンセンター
https://www.ccc.go.jp/ccc/index.html

4. 迷惑メール

(1) 迷惑メールの受信状況

インターネットによる迷惑メールは、年々増加しています。これに対して(財)日本産業協会<注3>によると2007年3月に携帯とパソコンの受信数が完全に逆転し、以降パソコンへの迷惑メール受信が多く増加しているということです。こうした迷惑メールに対して、日本では、特定電子メール法(総務省)と特定商取引法(消費者庁)の2本立てで対応しています。
これらの法制定によって、一定の成果はみられたものの、国外発のメールは規制の対象外であり、海外からの迷惑メールが圧倒的に大きくなっています。

<注3>日本産業協会
http://www.nissankyo.or.jp/

(2) 迷惑電子メールへの対応

―特定電子メール法―
2002年に制定された、迷惑メール対策に特化した法律で今までに2回改正されています。
基本的にはメール送信者に対する送信行為を規制するもので、規制対象は広告宣伝メールに限定され、違反に対しては、原則として措置命令(行政処分)で対処。それに従わない場合は刑事罰が化せられるとしています。一方でメールを受信するISPに対しては、「役務提供の拒否」(メールの廃棄)を一定条件の下で認めています。


―特定商取引法―
特定商取引法では通信販売、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引にかかる電子メール広告について広告する側を規制しています。単なるスパムメール以外に、不当請求、ワンクリック詐欺メールも対象としています。

※各規格名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

次回予告

次回は、安全安心な電子社会の構築(カテゴリ2)の第5の潮流「基盤的技術の進展」について解説します。

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Writer Profile

NTTデータ・セキュリティ(株)
エグゼクティブ・セキュリティマネージャ
林 誠一郎

1974 年:電電公社横須賀電気通信研究所に入所(大型計算機アーキテクチャの研究)
1983 年:電電公社研究開発本部(研究戦略の策定)
1991 年:NTT本社・技術調査部・部長(技術戦略の策定)
1993 年:NTT 情報処理研究所主幹研究員(暗号技術の研究開発)
1995 年:NTT データ技術開発本部・部長(セキュリティ技術の開発)
1999 年:NTTデータ金融事業本部・部長
1999 年:日本インターネット決済推進協議会 理事・副事務局長
2002 年:東京大学 国際・産学共同研究センタ・客員教授
2005 年:NTTデータ・セキュリティ(現職)

林誠一郎

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