現在の不況下において、企業の緊急の課題となっている「情報セキュリティ」をどのように考えるかについて、特別コラムとして報告します。
<参考1> ZDNet Japan 2008年2月5日
http://japan.zdnet.com/news/sec/story/0,2000056194,20366566,00.html
<参考2> Robert Half Technology
http://www.csoonline.com/article/489109/Report_Security_Tops_IT_Budget_Priorities
<参考3> Forresterの調査
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0901/09/news015.html
<参考4> ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0811/25/news011.html
情報セキュリティ投資が全体的に削減される中、セキュリティを情報管理のみならず危機管理全般について包括的に捉えようとする企業も見受けられるようになりました。
経営環境が複雑する中で企業が抱えるリスクが多様化していますので、個別の対応では効果的ではありません。そのため、社内外で発生し得るリスクを網羅的に把握し、発生可能性や影響度を評価した上で、適切な対策を決めていくことが現実的で効果的だとの認識が強まってきているようです。
また今日のグローバル化やIT化の進展、事業展開のスピードアップ等に加えて、CSR(企業の社会的責任)に対する注目が集まっていることを背景に、コンプライアンス、内部統制の点から、企業経営におけるリスク対応の重要性が増し、リスクマネージメントを内部統制と一体となってPDCA(Plan Do Check Action)を回そうとする動きが見られます。
リスクをネガティブなものとして捉えるばかりでなく、ビジネスチャンスとして捉えてリスクを軽減する統制活動だけではなく、リスクをマネージすることが2000年前後のビジネス環境の激変期から注目され始めました。2004年には企業価値の向上をねらったCOSO-ERM(エンタプライズリスクマネージメント) <参考5> が米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO)から公表されました。COSO-ERMでは、企業価値を高めるための手段として、戦略リスクと内部統制の構築・運用に関わるオペレーション・リスクを対象としてリスクマネージメントのプロセスを示しています。日本では、2008年の経済白書で、リスクテイクと競争力の関係についての調査 <参考6> が報告されています。
<参考5> COSO-ERM
http://www.erm.coso.org/Coso%5Ccoserm.nsf/frmWebCOSOHome?ReadForm
<参考6> 2008年経済白書(経済産業省)
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08p00000.html
整備対象のセキュリティ対策については、優先順位をつけたシビアな選別が進んでおり、事業の継続にとって不可欠なセキュリティ対応から順次進めているところが多くなっています。従来からセキュリティの投資効果が見えにくいといわれており、このことがさらに景気後退下でのセキュリティ投資削減にも繋がっています。容易に効果を検証できる実際的な手法が求められるところです。米国では、多数の企業(80%)でROI(Return On Investment)によるセキュリティに関わる投資効果を評価していますが、従来から日本においては一部の企業(11%程度)でしか実施していないようです <参考7> 。
<参考7> 米国における情報セキュリティの動き
http://www.nttdata-sec.co.jp/article/security/080515.html
<創立10周年特別連載スタート>
日本を中心とした情報セキュリティの大きな潮流について将来への動きも含めて解説する予定です。
元東京大学客員教授
林 誠一郎